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Madame Curie [読書・美術]

Madam Curie  エーヴ・キュリー著 河野万里子訳 より

非凡な業績を前に、ためらいと、諦観と、謙そんに終始した彼女自身は、ほんとはそれを、どのように思っていたのだろうか?

〈マリー・キュリーより姪ハンナ・シャライへ 1913年1月6日〉

・・・私はどの時代でも、人はおもしろく有意義な人生を送れると思っています。 肝心なのは、与えられた人生をむだにせず、〈わたしは自分にできることはやった〉と自分自身に言えるようにすること。 
周囲もそれ上は要求できませんし、ささやかな幸福を手にするためにも、これはただひとつの道です。 
 去年の春、うちの娘たちは蚕を飼いました。 わたしはまだとても体調が悪くて、何週間もなにもできず、蚕が繭をつくろのをじっと観察していたのです。 それがとってもおもしろかったの。 活発でいっしょうけんめいな蚕たちが、熱心に我慢強く繭をつくっていくようすには、ほんとうに感動しました。 そうして「わたしも同じ仲間だわ」と思ったのです ー 仕事に対しては、わたしのほうがずっと手ぎわが悪いとしてもね。 蚕たちと同じように、私もいつもひとつの目標にしんぼう強くむかっています。 そこに真実があるという確信は、少しも持てないまま。 人生はうつろいやすく、はかなく、あとにはなにも残らないと知っていますし、人生をまったくちがうふうにとらえる人たちがいることも、知っているからです。 それでもなおそこを目ざすのは、蚕が繭をつくるのと同じように、なにかがわたしをそうさせるから。 あわれな蚕は、たとえ完成させられなくても、繭をつくりはじめなくてはなりませんし、やはりせっせとはたらきます。 そうしてその仕事をやりとげられなければ、羽化することはできず、報いられることなく死んでいきます。
 いとしいハーニャ、どうかわたしたちが、それぞれに自分の繭を紡いでいくことができますように。 「なぜ」とか「なんのために」などと、問うことなく。


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